2日目はスキップして3日目の5月5日(日)、再び有楽町に出かけました。今度は事前に2つの公演を予約しています。
最初のコマは10時から。一限目の授業を受けるような気持ちで、ギリギリの時間に電車に飛び乗って行きました。
今年はフォーレの曲に挑戦したばかりでフランス音楽にアンテナが向いており、この曲も作曲者も全く知らなかったのですが挑戦してみました。プログラムには「フランスのロマン派作曲家」と記載があり、そうかロマン派・・・でもドイツ・ロマン派とは訳が違うだろうな、などと考えながら。何となく「フランス・ロマン派」に違和感を覚えてしまいましたが、この辺を考え出すとまた色々聴かないとならなくなりそうです。
ただ、ピアノ奏者にとってフランスといえばドビュッシー・ラヴェルで8〜9割方埋まってしまい、それがもったいないと思う今日この頃。フォーレも然りですが、最近プーランクも良いなあと思っています。そういう意味では、今回のようなプログラムがもっと増えてほしいですね。この曲は「稀有なる大曲」とされているだけあって一度では吸収しきれず・・・もっと聴き込む必要がありそうです。
最近クララ・シューマンにはまっています。この人に関する本をいくつか読んだ末、もしかしたらドイツ・ロマン派はクララなしには成り立たなかったのではないか、そういう意味では、ロベルトとクララの恋物語を散々妨害した悪役として登場するクララの父・フリードリヒはロマン派の立役者ではないのか、との考えに至りました。クララの楽譜も1冊購入していつか何か弾きたいと思っていた折、「マスタークラスでクララ・シューマン」という珍しいコマを見つけて申し込みました。
受講する男子学生は何を思ってこの曲を選んだのか?講師の先生もこの曲を聴くのが初めてだと言って笑っていました(注:講師は直前で変更になっています)が、始まってしまえばそこはプロフェッショナル。「音楽を教える=情熱を伝える」を地で行く、見ているだけでワクワクするレッスンが展開されました。本当に、音楽やっていて良かったと思えるのはこの一点だなと再確認。そしてふと隣の方を見ると楽譜持参で参加されていました。なるほど、もしかしたらピアノの先生をされていて、こういう所で学んでいこうという人も少なからずいるのかなと思った次第。
マスタークラスの会場に急ぎ足で向かっている時、地上広場のキオスクステージから聴こえてきた女性ボーカルに足を止めそうになりました。時間ギリギリだと思っていたので振り切って会場に到着したら「開場」時間と「開演」時間を間違えていた事が分かり(あるある)、また急いで地上広場へ。最後の1曲の後半だけ聴くことができました。
とても艶やかで伸びのある、ひと言で言って「色気のある」歌声でした。理屈抜きで音楽の良さが身に染みて、スタッフの方に声をかけてグループ名を教えてもらい、公演はSold outだったのでCDを購入。「Les Itinérantes」というグループですが日本語にすると少し難しくて「レ・イティネラント」と表記されています(CDでは「レ・ズィテネラント」となっていて発音的にはこちらの方が近いです)。「巡歴者たち」という意味だそうですが、英語で「itinerary」は「旅程」のような意味で、旅行の手配などをすると出てくる単語ですね。
展示場では「ショパンが弾きたくなるピアノ」や弦楽器製作者の制作デモ(写真は1日目のもの)、クラシック専門ラジオの公開放送など見聞きしながら、書籍コーナーで衝動買いしつつ、ロビーギャラリーで始まった小林愛実さんのサイン会を野次馬精神でのぞいたり。日本のクラシック音楽市場は空前の成熟期を迎えているのでは?と思えるほど、かつて僕が抱いていたクラシック業界のイメージよりも一歩突っ込んだ、より本格的な展示が目立ちました。
最後は民族系。前情報なく申し込んだのでどんな音楽かは聞いてからのお楽しみでしたが、僕もかつてはボヘミアンという言葉に憧れた身。こんな音楽に似合うような服も持っていたなあと懐かしくなりました。聴いている最中に気づいたら夢の中にいて、現実との境が曖昧になるような感覚があり、我に返って「そうだこれが音楽だよなあ」としみじみ。「クラシック音楽」という括りだと知性でもって対峙する感覚がありますが、もっと意識の底の方に働きかける、原始的と言って差し支えない音の世界。最後の方は日本の伝統楽器で即興ソロなど、見せ場もたくさんありました。
公演が終わって再び地上広場に戻ると、キオスクステージではピアノと弦楽器の演奏が続いていました。キッチンカーには変わらず行列ができていて、夕方なのでアルコールもどんどん出ているようでした。まさに祝祭。
ラ・フォル・ジュルネのプロデューサーであるルネ・マルタン氏の言葉を集めた書籍も購入しました。実は以前、2012年だったと思いますが、一時期離れていたイベント業から復帰する際にラ・フォルの運営スタッフをやりたいと思い応募した事があります。集団面接の時に周りが学生風の人ばかりで、自分ひとり経験者のようだったので気後れして辞退したのですが、気にせずあのまま進んでいたらどうなっていたかなと思わないでもないです。マルタン氏のように夢と愛とを赤裸々に語れる人の元で仕事ができるのは幸運な事ですね。
最後、井上道義x伊福部昭も興味があったのですがもうお腹いっぱい。陽が落ちる前に帰途につきました。
今まで「ラ・フォル」は気にはなっていたものの足を運べず、という事ばかりで、ここまで堪能したのは初めてでした。今度は本場のナントにも行ってみたいと思った次第。今回のテーマ「Origines」も、個人的に初心に立ちかえることができたのでピッタリしっくりきました。次回が今から楽しみです。
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